大型連休の過ごし方に迷ったことのない人はいないと思う。飛行機は高い、宿泊は高い、高速は渋滞と、どこに行っても逆に疲れることばかりだからだ。
私も学生時代までは部活をやっていた為、ゴールデンウィークとは無縁の生活であったが、社会人となりゴールデンウィークをどう過ごして良いか分からず、もっと充実できるのではないか等と無駄に疲れた経験がある。
そして2021年、ついに我流ゴールデンウィークの最適解を見つけたのでご紹介したい。このパターンをご覧頂ければ、いつでもどんな時でも一定価格、混雑なしの旅を実現できること間違いなしである。
その解は、鉄道で国内をひたすら巡るというもの。鉄道旅というとローカル線をひたすら乗るだけのイメージがあるが、現在では「のって楽しい電車」など、乗ること自体が観光になる列車が東日本だけでも何便も運行されている。
今回はコスト、車窓の美しさ、食と酒の充実度の観点から以下の行程で東日本を一周したので詳細をレポートしたい。
目次
全体の行程
今回は2泊3日の行程。東京駅から山形、新潟、長野を経由し小淵沢駅へ抜けるルートを選択。
1日目:山形を抜けて新潟へ
東京〜新庄 (山形新幹線)
東京駅から新庄までは行程の中で唯一新幹線を選択。新庄まで在来線で行くとそれだけで1日かかってしまうのと、新幹線はお先にトクだ値スペシャルで通常の半額で乗れるので気軽にチョイスすることができた。
福島駅を出てからは大きくカーブして山形へ向かう。福島を出てからの車窓には要注目だ。
新庄駅
新庄駅は山形新幹線の延伸に伴い1999年に建て替えられた比較的新しい駅舎で、新庄・最上まんがミュージアムが隣接しており、暇つぶしに困ることはない。
まんがミュージアムには3月のライオンをはじめとしたゆかりのある著者の漫画が読めるほか、原画やグッズが展示されている。
新庄〜酒田(陸羽西線)
新庄駅からは陸羽西線で酒田へ。
約2時間の道のりであるが、途中からは進行方向右手に最上川が並行して流れ、西洋を思わせる美しい車窓が続く。
酒田〜新潟(★海里)
酒田駅に到着。酒田駅構内には売店などはないので注意したい。
レトロだが隅々まで手入れが行き届いた素晴らしい駅舎。意外にも新潟方面に向かう特急や、秋田方面に向かう在来線が頻繁に発着している。
海里の外観
海里の車両はHB-E300系という「リゾートビューふるさと」や「リゾートしらかみ」でも使用されている車両である。その中でも2019年に完成したばかりの新型車両である海里では、日本海の壮大な景色を眺められるのが最大の売りポイントの列車である。
外観は朱色と黒のシックなデザインとなっており、海里のロゴと相まって他にない高級感を醸成している。
海里の内装
内装も外観と同じく朱色と黒を中心にシックな作りとなっている。コンパートメント車両が1両組み込まれており、半個室でゆっくり車窓を楽しむことが可能。
海里のお土産
3号車は売店スペースとなっている。事前予約すれば「海里特製弁当」(新潟方面行きでは鶴岡駅以降の受け取り)を購入できるほか、サッポロのご当地ビール「風味爽快ニシテ」や村上茶などの名産の飲料、スナックを購入することができる。
海里からの車窓
鶴岡駅以降新潟駅の手前までは雄大な日本海を眺めることができる。
2日目
新潟〜長岡(信越本線)
新潟からは信越本線で約1時間半かけて長岡を目指す。2014年にデビューしたE129系に乗車。クロスシートも完備した6両編成で、乗り心地は抜群だ。
途中、JR東日本の車両の太宗を製造している新津駅や、SnowPeakやパール金属の所在する三条市を通過し車窓に飽きることはない。
長岡〜十日町(★Shu✳︎Kura)
池田屋の駅弁
長岡駅では改札外の「池田屋」さんで駅弁を購入。人気NO.1の「越後長岡喜作弁当」と「火焔釜飯」を購入。どちらも過去に食べた駅弁の中でトップクラスに美味しく、幸せな気持ちになれる駅弁であった。
長岡駅からはのってたのしい列車の1つである快速「越乃Shu*Kura」に乗車。こちらの列車はえちごトキめき鉄道の上越妙高駅が始発のため、途中乗車となる。
越乃Shu*Kura外観
2014年にデビューした越乃Shu*Kuraは気動車であるキハ40/48型車両を改造して使用している。しかし、サービスカウンターのある2号車は特に窓が大きく取られており、開放感は申し分ないデザインだ。
越乃Shu*Kura内観
内装は木目調やオレンジの照明を生かした温かみのあるデザイン。3号車のリクライニングシートでもグリーン車並みの十分なスペースが確保されており、全く困ることはない。
越乃Shu*Kuraサービスカウンター
2号車のサービスカウンターでは、地酒のショットやJR東日本オリジナル日本酒ブランドの「しゅぽっぽ」、各種ドリンクのほか、お弁当や雑炊の販売を行っている。
十日町〜まつだい(ほくほく線)
本来の予定は越乃Shu*Kuraの後、十日町駅から快速「おいこっと」へ乗車することになっているが、接続で2時間以上あるので、周辺をお散歩することに。
北越急行線(ほくほく線)で十日町から一駅のまつだい駅へ向かった。ここは北越急行線発祥の地(建設計画はまつだいのじば企業から持ち上がった)であるとともに、景観の美しさで知られる「星峠の棚田」があることで有名だ。
タクシーの運転手さん曰く、戦後田中角栄さんの働きかけにより新潟の交通網が充実したことは多くの人が認めており、特にこのまつだいは鉄道がないと隣町まで山を回避して車を走らせる必要があるため、かつては陸の孤島と化していたとのこと。上越新幹線が北陸新幹線や秋田・山形新幹線に先駆けて1982年に開業したのもそうした政治面での尽力が大きいことを改めて実感した。金沢駅までの北陸新幹線開業が2015年であることを考えると、いかに新潟が交通に恵まれているかがわかる。
十日町〜長野(★おいこっと)
まつだいから再び十日町へ戻り、快速「おいこっと」へ乗車。ネーミングの由来は東京の真逆で何もない(Tokyo→ Oykot)というユニークな列車だ。
おいこっと外観
おいこっとは気動車のキハ110系を使用しており、外観は極めて素朴かつシンプルである。1号車と2号車でカラーリングが逆転しているのと、各扉にロゴが掲示されているのが楽しいポイント。
おいこっと内観
おいこっとは2015年に運行を開始したばかりということもあり、座席はもちろんトイレに至るまで清潔感あふれる内装となっている。
おいこっとからの車窓
おいこっとの走る飯山線はこの旅随一の車窓であった。雄大な水を讃える信濃川に沿ってゆったりと流れる水田や菜の花畑はまさにネーミングの通り東京の車窓の真逆と言えるだろう。
また、途中長野県栄村にある森野宮原駅では20分の停車時間があり、周囲に大きな施設はないものの駅周辺を散策することが可能だ。
長野県側に入り信濃川は千曲川と名称を変え、さらに車窓の開放感は増していく。時間のない時は長野駅〜飯山駅だけの乗車でもいいかもしれない(どちらも北陸新幹線の停車駅)。
長野駅に到着
この日の終着駅はおいこっとの終点でもある長野駅。新幹線やしなの鉄道、長野電鉄も乗り入れる県内随一のターミナル駅である。商業施設や宿泊施設も充実しているので、困ることはまずない。
3日目
善光寺下〜長野(長野電鉄)
3日目の朝は善光寺下駅からスタート。善光寺下駅は善光寺から徒歩15分かかるものの、長野にある地下駅というレアさを味わうにはちょうどいい駅である。
長野電鉄は首都圏で走っていた車両が多く使用されており、この日は元東急8500系や旧ロマンスカーに遭遇することができた。
長野〜小諸(しなの鉄道)
長野駅からはしなの鉄道で小諸駅へ。しなの鉄道は長野駅迄の北陸新幹線(旧称長野新幹線)開業に伴い日本で初めて第三セクターとして設立された鉄道会社である。
車両も国鉄時代から使用されている115系を中心に運行されており、窓を開け風を入れると暖かい気持ちで眠りにつくことができる。
小諸〜小淵沢(★HIGH RAIL1375)
小諸駅からは小海線で小淵沢駅へ。小海線はJRの中で最も標高の高い1,375mを通る路線であり、八ヶ岳をはじめとした眺望や星空が売りの路線である。
のってたのしい列車の一つであるHIGH RAIL1375はおいこっとと同じキハ110系を使用した列車であり、車内には展望シートやBOXシート、リクライニングシートのほか、プラネタリムやライブラリ、車内販売コーナーを設けている。
HIGH RAIL1375外観
外観は元のキハ110系の面影を残しつつも、星ぞらをイメージした濃紺を中心に遊び心のあるデザインとなっている。
HIGH RAIL1375内観
2両編成と短いながら、必要な機能は全て揃っている。特に後方展望を眺められるよう運転台の右側が開放されており、誰も気にすることなく車窓を楽しむことができる。
HIGH RAIL1375 車内販売
車内販売では軽井沢ビールのほか、HIGH RAILオリジナルクッキーなど車内限定グッズを購入することができる。
小淵沢〜甲府(中央線)
小淵沢からは中央本線で甲府駅へ。この日はこのまま中央線特急で東京へ戻ることもできるが、余裕を持って甲府へ宿泊することにした。
まとめ
ゴールデンウィークは充実した旅行ができない、という先入観を崩すことができた旅行となった。日本の地方路線の多くは人口減少、自動車の普及、高齢化に伴い廃止が相次いでいる。将来に向け地方交通を残すためにも、機会があればこうして地方の鉄道を回り、その魅力を全身で感じたいと思う。